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長引く「歯がしみる」症状の原因は?知覚過敏のメカニズムと適切な治療法を院長が解説

冷たいお水を飲んだ瞬間、歯に「キーン」と鋭い痛みが走る。
あるいは、毎日の歯磨きでブラシが当たると「ズキッ」とする。
こうした症状に悩み、食事や歯磨きが億劫になってしまっている方はいらっしゃいませんか?
こんにちは、院長の室木です。
「ただの知覚過敏だろう」「そのうち治るだろう」と軽く考えがちなこの症状ですが、数週間から数ヶ月にわたって続く場合、それは単なる一過性のトラブルではありません。歯や歯茎からの「助けて」というSOSサインである可能性が高いのです。
実は、知覚過敏が長引く背景には、ご自身では気づきにくい「歯の構造的な問題」や「生活習慣」が複雑に絡み合っていることが少なくありません。
この記事では、なぜ歯がしみるのかというメカニズムから、当院で行っている精密な検査、そしてご自宅でできるケアまで、専門的な視点で分かりやすく整理しました。大切な歯を守るための知識として、ぜひお役立てください。
目次
- なぜ「しみる」のか?知覚過敏の正体とメカニズム
- 長引く痛みには理由がある。隠れた4つの根本原因
- 虫歯との違いを見極める。歯科医院での精密検査プロセス
- 段階的な治療アプローチ:薬の塗布から修復治療まで
- なかなか治らない場合に疑う「酸蝕歯」と「マイクロクラック」
- 今日からできる生活習慣の見直しとセルフケア
- 「神経を取るしかない」と言われた方へ。治療の限界と判断基準
- 当院の取り組みと受診のタイミング
- まとめ:痛みを我慢せず、原因にアプローチしましょう
1. なぜ「しみる」のか?知覚過敏の正体とメカニズム
歯は本来、「エナメル質」という人体で最も硬い組織の鎧(よろい)で覆われています。このエナメル質があるおかげで、私たちは熱いものや冷たいものを食べても痛みを感じることなく噛むことができます。
しかし、何らかの原因でこの鎧が削れたり、歯茎が下がって歯の根っこが露出したりすると、その内側にある「象牙質(ぞうげしつ)」がむき出しになります。
象牙質には「象牙細管(ぞうげさいかん)」と呼ばれる、目に見えないほどの無数の小さなトンネルが通っています。このトンネルは歯の神経(歯髄)に直接つながっているため、冷たい水や風、甘いもの、歯ブラシの接触といった刺激がトンネルを通って神経にダイレクトに伝わり、「痛み」として認識されるのです。
これが、知覚過敏(象牙質知覚過敏症)の基本的な正体です。
健康な状態であれば、象牙細管は唾液中の成分などによって自然にふさがれ、守られていますが、お口の環境が悪化してトンネルが開いたままになると、痛みの信号が送られ続けることになります。
2. 長引く痛みには理由がある。隠れた4つの根本原因
「数日様子を見たけれど治らない」という場合、原因が除去されていないか、複数の要因が重なっていることが考えられます。主な原因は以下の4つです。
① 歯周病による歯茎下がり(歯肉退縮)
歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶け、それに伴って歯茎の位置が下がります。すると、本来エナメル質に守られていない「歯の根(歯根)」が露出してしまいます。歯根の象牙質は非常に柔らかく敏感なため、少し出ただけでも強い痛みを感じることがあります。
② 不適切なブラッシングによる摩耗
「汚れをしっかり落としたい」という意識から、硬い歯ブラシで力任せに横磨きをしていませんか?これにより歯の根元が削れ、くさび状にえぐれてしまうことがあります(くさび状欠損)。良かれと思って行っているケアが、皮肉にも歯を傷つけ、知覚過敏を悪化させているケースは非常に多いです。
③ 過度な咬合力(歯ぎしり・食いしばり)
睡眠中の歯ぎしりや、日中の食いしばり(TCH)により、歯に過剰な力がかかり続けると、歯の根元に応力が集中します。すると、エナメル質が根元からポロポロと微細に崩壊する「アブフラクション」という現象が起き、象牙質が露出してしまいます。
④ 酸による浸食(酸蝕歯)
酸っぱい飲み物や食べ物、あるいは胃酸の逆流などにより、歯が化学的に溶けてしまう状態です。エナメル質全体が薄くなるため、広範囲にしみる症状が出やすいのが特徴です。
3. 虫歯との違いを見極める。歯科医院での精密検査プロセス
「歯がしみる」=「虫歯」と考える方は多いですが、実は自己判断は危険です。当院では、以下のプロセスで痛みの正体を正確に鑑別します。
- 詳細な問診: 痛むのは一瞬か持続的か、何をした時に痛むか(冷水、温水、甘味など)を伺います。
- 視診と触診: 歯の根元が削れていないか(くさび状欠損)、歯茎の状態はどうか、亀裂がないかを確認します。
- 刺激検査: エアーシリンジで風を当てたり、冷たい水を含ませたりして、痛みが再現されるか確認します。
- 打診: 歯を軽く叩いて、歯の根の膜に炎症が起きていないか調べます。
- レントゲン撮影: これが非常に重要です。知覚過敏の場合、レントゲンには異常が写らないことが一般的です。逆に、虫歯が深く進行していれば画像で確認できます。
これらの結果を総合し、「削るべき虫歯」なのか「保存的に治すべき知覚過敏」なのかを慎重に診断します。
4. 段階的な治療アプローチ:薬の塗布から修復治療まで
診断がついた後は、いきなり歯を削るようなことはせず、身体への負担が少ない治療から段階的に進めていきます。
ステップ1:知覚過敏抑制剤の塗布
露出した象牙細管の入り口をふさぐ薬剤や、神経の興奮を鎮める薬剤を歯に塗布します。即効性がある場合もありますが、数回繰り返すことで徐々に薄い膜ができ、症状が落ち着くことが多いです。ご自宅では、硝酸カリウム(神経を鎮める成分)や乳酸アルミニウム(穴をふさぐ成分)が配合された専用歯磨き粉の併用をお勧めします。
ステップ2:コーティング・充填処置(詰め物)
薬剤で効果がない場合や、歯の根元が物理的に大きく削れている場合は、「コンポジットレジン」というプラスチックの詰め物で患部をカバーします。これにより刺激を物理的に遮断し、えぐれた歯の形態も元に戻します。
ステップ3:噛み合わせの調整・ナイトガード
歯ぎしりなどの「力」が原因である場合、噛み合わせのバランスを微調整したり、就寝時にマウスピース(ナイトガード)を装着していただいたりすることで、歯への破壊的な負担をコントロールします。
5. なかなか治らない場合に疑う「酸蝕歯」と「マイクロクラック」
一般的な治療をしても症状が改善しない場合、見落とされがちな2つのリスクを疑います。
- 酸蝕歯(さんしょくし)のリスク
健康のためにとお酢や柑橘類、スポーツドリンクを頻繁に摂取していませんか?酸によって歯が溶け続けている状態では、いくら薬を塗ってもイタチごっこになってしまいます。この場合、食生活の改善指導や、場合によっては内科(逆流性食道炎など)との連携が必要です。
- マイクロクラック(微細なヒビ)のリスク
強い噛み合わせの力や加齢、熱いものと冷たいものの温度差疲労などにより、歯に目に見えないレベルのヒビが入ることがあります。レントゲンには写りませんが、噛むたびにヒビが開閉して神経を刺激し、頑固な痛みを引き起こします。診断にはマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)での観察や染色検査が有効です。ヒビが深い場合は、被せ物で歯全体を覆って保護する治療が必要になることもあります。
6. 今日からできる生活習慣の見直しとセルフケア
歯科医院での治療と同じくらい重要なのが、患者様ご自身による「原因の除去」です。
- ブラッシング圧のコントロール
歯ブラシは鉛筆を持つように軽く握り、毛先が広がらない程度の優しい力(100g〜150g程度)で小刻みに動かしてください。「ゴシゴシ」ではなく「シャカシャカ」という音が目安です。歯ブラシは「ふつう」か「やわらかめ」を選びましょう。
- 食後のケアとタイミング
酸っぱいものを食べた直後は、歯の表面が一時的に柔らかくなっています。このタイミングでゴシゴシ磨くと歯が削れやすいため、まず水で口をゆすぐか、30分ほど時間を置いてから磨くようにしましょう。
7. 「神経を取るしかない」と言われた方へ。治療の限界と判断基準
「痛くて我慢できないから、神経を取ってください」と希望される患者様もいらっしゃいます。お気持ちは痛いほど分かりますが、神経を取る(抜髄)処置は、当院では「最終手段」と考えています。
神経を失った歯は、栄養がいかなくなるため枯れ木のようにもろくなり、将来的に割れたり折れたりするリスクが格段に上がります。つまり、歯の寿命を縮めてしまうのです。
しかし、あらゆる治療を行っても激痛が治まらず日常生活に支障をきたす場合や、すでに神経が炎症を起こして回復の見込みがない(歯髄炎)場合に限り、患者様と相談の上で神経を取る処置を行うことがあります。
8. 当院の取り組みと受診のタイミング
当院では、知覚過敏を単に「薬を塗って終わり」にするのではなく、その背景にある生活習慣や噛み合わせの問題までを含めたトータルな診断を行っています。
マイクロスコープを用いた精密な観察で、肉眼では見えないヒビや適合の悪い詰め物を見逃しません。
- 冷たいものがしみて食事が楽しめない
- 歯磨きが痛くて、十分に汚れを落とせない
- 市販の知覚過敏用歯磨き粉を使っても2週間以上改善しない
このような場合は、我慢せずに受診をご検討ください。痛みを避けるために歯磨きがおろそかになり、そこから虫歯や歯周病が進行するという悪循環に陥る前に、適切な手を打ちましょう。
9. まとめ:痛みを我慢せず、原因にアプローチしましょう
知覚過敏は、「歯が削れている」「力がかかりすぎている」という身体からの警告です。
原因を突き止め、適切なケアを行えば、また冷たいお水も熱いコーヒーも美味しく楽しめる毎日は戻ってきます。まずは検査で「なぜしみるのか」を知ることから始めましょう。
たまプラーザで知覚過敏の治療や、歯がしみる症状のご相談なら、たまプラーザむろき歯科・矯正歯科へお任せください。
土曜日も診療を行っておりますので、平日お忙しい方もWEB予約・LINE予約からお待ちしております。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者
北海道大学歯学部を卒業後、恵愛歯科および笠原歯科に勤務。その後、笠原歯科人形町で院長として勤務し、1998年にむろき歯科医院を開業、さらに分院としてふぁみりあ歯科を開業
【略歴】
- ・北海道大学歯学部卒業
- ・恵愛歯科(東京都新宿区)勤務
- ・笠原歯科(東京日本橋蔵前本院)勤務
- ・笠原歯科人形町分院長
- ・むろき歯科医院開院
- ・医療法人社団 貴歯会設立 理事長就任
- ・分院 ふぁみりあ歯科開設
- ・北海道大学歯学部関東同窓会 広報理事
【所属団体】
- ・ITI インプラントAuthorization 取得
- ・ITI member
- ・ITIインプラントスペシャリスト認定
- ・日本口腔インプラント学会会員
- ・厚生労働省認可 社団法人日本歯科先端技術研究所会員
- ・同インプラント100 時間コース修了
- ・同インプラントフェロー認定
- ・インプラントスタディーグループ AOS 理事
- ・韓国KyungHee 大学
- ・Adavance surgery course 修了
- ・インビザライン Authorization取得
- ・アチーブメントテクノロジー
- ・スタンダードコース、ダイナミックコース、ダイナミックアドバンスコース、ピークパフォーマンスコース、ボースウィンマネージメント受講
- ・アシスタントプロスピーカー認定
たまプラーザ駅徒歩2分の歯医者・矯正歯科
TEL:045-912-2633
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