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セラミック・銀歯・レジンの違いを専門目線で整理|たまプラーザで自分に合う修復材料を選ぶコツ

たまプラーザ駅徒歩3分の「たまプラーザむろき歯科・矯正歯科」院長の室木です。
むし歯や欠けの治療で「セラミック・銀歯(金属)・レジン(樹脂)」のどれにするべきか——診療室で最も多い相談のひとつです。見た目、強さ、しみやすさ、長持ちのしやすさ、再発リスク、清掃のしやすさ、そして費用感。どれか一つの“正解”があるのではなく、患者さんのお口の条件と優先順位を軸に選ぶのが本質です。本稿では、素材の性質と臨床での使い分け、長持ちに効く設計とメンテナンスの視点まで、歯科医の立場で整理します(医療広告ガイドラインに配慮し、具体的な費用や個別の適応は診察後にご説明します)。

 

目次

 

1. 素材の基礎知識:セラミック/金属(銀歯)/レジン

 

セラミックはガラス質・結晶質からなる無機材料で、光の透過・反射が天然歯に近く、経年での変色が少ないのが特徴です。単体の焼成型、フレームに陶材を築盛するタイプ、結晶含有率の高い高強度タイプ(例:ジルコニア系)など複数の“系”があり、審美と強度のバランスが選べます。接着操作を前提に設計されるため、微小漏洩を抑えやすい一方、衝撃や局所的な応力集中で割れる可能性がゼロではありません。
金属(いわゆる銀歯)は、臨床的には保険適用の金銀パラジウム合金が代表的です。強度と加工性に優れ、薄くても強いため、咬合力の強い臼歯部で安定しやすい一方、電解腐食や金属イオンの溶出、歯肉の縁が黒く見えやすい審美上の課題があります。接着ではなくセメント固定中心で設計されることが多く、適合・咬合・清掃性が長期予後を左右します。
レジン(コンポジットレジン)は歯科用樹脂で、1回の来院で直接詰められる即時性が利点です。小さなむし歯や欠けの修復に有用で、歯の切削量を抑えやすい長所があります。ただし、経年的な摩耗・変色・吸水膨張が起こりうるため、範囲が広い・負荷が強い部位では再治療の頻度が高くなる傾向があります。

 

2. 見た目と色の安定性:審美性を“経年”で評価する

 

前歯の審美は、色だけでなく透過・蛍光・表面の微細形態まで噛み合って成立します。セラミックは光学特性の再現性が高く、飲食や喫煙による着色に強いため、長期の色安定性に優れます。レジンは調色できるものの、表面硬さと耐摩耗性の限界から年単位でつや落ち・変色が出やすい。金属は審美性を最優先する部位には不向きです。
ただし、どの材料でもマージン(縁)の設計と研磨が粗いと、プラーク付着→着色→歯肉の発赤につながります。材料の良否より、仕上げの質で見た目は大きく変わります。

 

3. 強度・しみやすさ・割れやすさ:機械的性質と薄さの限界

 

臼歯部では咬合力が100kgfを超える場合があり、薄さの限界を超える設計は欠け・破折のリスクになります。金属は薄くても耐えるので、歯質温存の面で有利な場面がある一方、セラミックは適切な厚みと支え(フェルール)を確保することが前提です。高強度セラミック(ジルコニア系)は破折に強い反面、対合歯の摩耗や咬合調整の難度が上がる場合があり、艶の維持と研磨が重要になります。
“しみやすさ”は材料だけで決まりません。露出象牙質の有無、接着の安定、噛み合わせの微小干渉が影響し、応力集中で神経が過敏化することがあります。咬合の調整と再石灰化環境を整えると改善するケースは多いです。

 

4. 二次う蝕・歯周への影響:境目の精度と清掃性

 

修復物の“寿命”を縮める最大要因は、境目の段差や隙間に生じるバイオフィルムです。
セラミックは接着の化学的安定性を得やすく、マージンの精度が高い設計なら二次う蝕の抑制に寄与します。金属は鋳造の適合精度が強みですが、セメントの溶出や経年的腐食が絡むとリスクが上がります。レジンは術者の手技(層状充填、光照射、収縮応力管理)の影響を強く受け、ラスト1mmの丁寧さが予後を大きく左右します。
歯周への影響は、縁の位置と形態が決定的です。深すぎるマージンは清掃困難を招き、浅すぎるマージンは露出で二次う蝕の温床に。歯肉縁直下〜縁上の可清掃域に置けるかどうかが、材料に関係なく重要です。

 

5. アレルギー・金属イオン・舌触り:生体親和性の観点

 

金属は金属アレルギーの既往や皮膚症状との関連が議論される領域です。全員に起きるものではありませんが、リスク因子がある方は材料選択の再考やパッチテストを含む皮膚科連携を検討することがあります。
セラミックは生体親和性が高く、味や舌触りの違和感が少ない利点があります。レジンはモノマー残留や吸水の影響が僅かにあり得ますが、歯科用として規格管理されており、適切な重合と研磨が行われれば臨床上大きな問題は稀です。

 

6. 部位別の現実解:前歯・小臼歯・大臼歯での使い分け

 

前歯部:審美性と透明感の再現、歯肉ラインの自然さが鍵です。セラミック(築盛型やガラス系)が第一選択になりやすい一方、小さな欠けはレジンで最小介入が合理的です。
小臼歯:見た目と強度のバランスが求められ、セラミックインレー/クラウンが現実解。咬合干渉が強い方は高強度セラミックか金属も検討します。
大臼歯:咬合力が強く、厚みの確保が難しい場面では金属の合理性が残ります。十分な厚みと設計が取れるなら高強度セラミックも有効です。広範囲欠損はレジン単独では再治療頻度が上がりがちで、間接修復(セラミック等)が安定します。

 

7. 長持ちの鍵は“材料”より“設計と手技”:形成、接着、咬合、メンテ

 

材料の差は確かにありますが、寿命を決めるのは“設計と手技”です。
形成は最小限で、かつ道具が届く形に整えます。接着は隔離(唾液を入れない)・表面処理・適切な照射という基本を外さない。咬合は点でなく面で受け、側方干渉や高い点を残さない。仕上げ面の艶と滑沢はプラーク付着に直結します。
さらに、メンテナンスでの再評価が材料を問わず必須です。マージンの着色、歯肉の発赤、フロスの引っかかり、咬耗や微小欠けを早期に補修できれば、大掛かりな再治療を避けられます。材料はゴールではなく、長期運用の“スタートライン”だとお考えください。

 

8. よくある質問と誤解

 

「セラミックなら絶対に割れない?」
割れにくい設計は可能ですが、絶対はありません。厚み、支台歯の量、噛み合わせ、食いしばり、ナイトガードの有無など全体設計が左右します。

「銀歯は全部やり替えるべき?」
機能的・衛生的に問題がなく、適合が良い銀歯は直ちに交換すべきとは限りません。不具合がある部位は、材料変更を含めて選択します。

「レジンは“仮”の材料?」
小さな病変や辺縁部の修復では、適切な手技なら長期に機能します。広範囲・荷重部では間接修復の方が合理的です。

 

9. 当院の方針:材料選びを“共同意思決定”に

 

私たちは、所見(画像・写真)→選択肢→長所短所→想定耐用と運用を同じテーブルに並べ、患者さんの優先順位(見た目、強度、切削量、通院回数、費用感、将来の治療計画)を反映して一緒に決めることを重視します。
前歯では清掃性と歯肉ラインの自然さ、臼歯では厚みの確保と咬合安定を優先し、食いしばりが強い方にはナイトガードも含めた再発予防策をあらかじめ設計します。治療後は、担当衛生士がメンテナンスでマージンと清掃状態をチェックし、“戻り始め”を点で補修していきます。土曜日も診療していますので、平日が難しい方もご相談ください。

 

まとめ

 

セラミック・銀歯・レジンの違いは、見た目・強度・経年変化・清掃性・生体親和性に現れます。しかし最終的な予後を決めるのは、材料だけではなく、設計・接着・咬合・仕上げ・メンテナンスの総合力です。大切なのは、あなたの口の条件と優先順位を起点に、長期に後悔しにくい選択を一緒に組み立てること。迷っている段階でも、現状評価と選択肢の整理だけで受診いただいて構いません。たまプラーザで“長くもつ”現実的な治療を、一緒に設計しましょう。

 

少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

監修者

室木 貴行 | Muroki Takayuki

北海道大学歯学部を卒業後、恵愛歯科および笠原歯科に勤務。その後、笠原歯科人形町で院長として勤務し、1998年にむろき歯科医院を開業、さらに分院としてふぁみりあ歯科を開業

 

【略歴】

 

【所属団体】

 

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住所:神奈川県横浜市青葉区新石川3-4-18

TEL:045-912-2633

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