医院ブログ
根管治療が必要と言われたら|たまプラーザで歯を残すための選択肢と再発予防

たまプラーザ駅徒歩3分の「たまプラーザむろき歯科・矯正歯科」院長の室木です。
「根管治療(こんかんちりょう)が必要です」と聞くと、不安や疑問が一気に湧いてくるものです。痛みはいつ治まるのか、抜歯を避けられるのか、治療回数はどれくらいなのか——。本稿では、歯を残すという目的から逆算して、根管治療が必要になる理由、診断と治療の考え方、再発を防ぐための実務的なポイント、そして抜歯や再治療(リトリートメント)などの選択肢まで、臨床の視点で丁寧に解説します。医療広告ガイドラインに配慮し、数値的な成功率や個別の費用は記載しません。適応や回数はお口の状態で変わるため、診察後に個別にご案内いたします。
目次
- 根管治療とは何をする治療か
- なぜ必要になるのか——痛み・腫れの正体
- 診断の進め方——“原因の地図”を描く
- 実際の治療の流れ——回数と各ステップの意味
- 再発を防ぐ要点——術中・術後の“抜け漏れ”をなくす
- リトリートメント・外科的アプローチ・抜歯の判断軸
- 仮歯・最終補綴と噛み合わせの設計
- 痛みや腫れへの対応——受診目安と生活上の留意点
- よくある誤解Q&A
- 当院の取り組み——“その場しのぎ”で終わらせない根管治療
- まとめ
1. 根管治療とは何をする治療か
歯の内部には神経や血管が通る細い空間(根管)があり、むし歯や外傷、噛み合わせの過負荷などで内部に炎症や感染が起こると、痛みや腫れの原因になります。根管治療は、感染した組織や細菌、老廃物を丁寧に取り除き、内部を洗浄・消毒して密封することで、再感染を防ぎ、歯の保存を目指す治療です。
ポイントは二つです。①細菌の温床をなくす、②清潔を保ったまま密封する。どちらが欠けても再発のリスクが上がります。
2. なぜ必要になるのか——痛み・腫れの正体
「冷たいもので一瞬しみる」段階のう蝕や知覚過敏と違い、何もしなくてもズキズキ痛む・夜間に増悪する・噛むと響くなどの症状は、歯髄(神経)あるいは根の周囲の組織に炎症が及んでいるサインことが多いです。さらに進むと、根の先に膿の袋(透過像)が見られ、歯ぐきに瘻孔(小さな吹き出もの)ができることもあります。原因は一つでなく、深いむし歯、過去の治療後のすき間(二次う蝕・辺縁不適合)、クラック(微小亀裂)、外傷、強い食いしばりなどが重なっている場合も少なくありません。
3. 診断の進め方——“原因の地図”を描く
治療の質は診断の質を超えません。当院では、問診で痛みの経過・誘因・全身状態・既往歴を丁寧に把握し、視診・打診・触診・歯髄検査(冷温・電気)で反応の“質”を確認します。画像は段階的に用い、パノラマで全体像、デンタルX線で歯根と周囲組織の細部、必要に応じて歯科用CTで三次元的に根の形態や病変の広がり、上顎洞・下顎管との位置関係を評価します。
同じ痛みでも原因が違えば段取りも違うため、むし歯由来か、既存の被せ物の隙間か、クラックが主因かを切り分けます。とくにクラックは肉眼で見落としやすく、咬合紙や拡大視野での観察、症状の誘発パターン(噛み合わせで鋭い痛み)を手がかりに判断します。
4. 実際の治療の流れ——回数と各ステップの意味
回数は歯の状態(感染の強さ、根管形態、クラックの有無)で変わりますが、各ステップの意味が分かると不安は軽くなります。
隔離(アイソレーション)
唾液や細菌の侵入を避けるため、ラバーダム等で治療する歯を清潔に保ちます。清潔な環境が再感染のリスクを大きく下げる基本です。
アクセス・拡大形成
歯の中に入口を作り、細い根管を専用器具で清掃しやすい形に整えます。無闇に広げるのではなく、根の形に調和させることが大切です。
洗浄・消毒
機械的清掃で届かない微細な分岐や壁に対し、洗浄液を工夫して化学的にバイオフィルムを除去します。ここで焦らないことが後の痛みや再発を減らします。
仮封・症状観察
症状や滲出の量を確認しながら、回をまたぐ場合は緊密な仮封で外部からの汚染を防ぎます。仮封の密閉性が弱いと、せっかくの洗浄が台無しになります。
根管充填(密封)
十分な洗浄後、すき間を作らないように充填します。ここがルーズだと微小漏洩の温床になり、再感染の原因となります。
最終修復(コア・被せ物)
内部を密封しても、上からの微小漏洩があれば意味がありません。歯質の残り方や噛み合わせを見て、外側の封鎖と強度を回復します。
5. 再発を防ぐ要点——術中・術後の“抜け漏れ”をなくす
再発の大半は、どこかに“すき間”が残ることで起こります。
術中は清潔な術野・丁寧な洗浄・緊密な充填が三本柱です。術後は、早期の最終修復で上からの漏洩を防ぎ、噛み合わせの過負荷を見直します。クラックが疑われる場合、充填や被せ物で歯冠全体を抱える設計(フェルールの確保)が有効になることがあります。さらに、歯周の炎症や不良清掃も再発要因となるため、衛生士によるメンテナンスでプラークコントロールを安定させます。
6. リトリートメント・外科的アプローチ・抜歯の判断軸
すでに根管治療を受けている歯が再び痛む・腫れる場合、再治療(リトリートメント)で改善の余地があります。過去の充填の緩み、取り残した根管、上部からの漏洩など、原因に応じてやり直します。
根の先端に限局した病変が残る場合、外科的アプローチ(根尖切除など)を検討することもあります。
一方で、深いクラックや歯根破折、著しい歯質欠損では、残す利益より抜歯の利益が上回ることもあります。抜歯後はブリッジ・インプラント・義歯のいずれかを選択肢とし、生活の優先順位や清掃能力、隣在歯の状況を踏まえて一緒に決めます。重要なのは、残す・抜くを“今だけ”ではなく“その後”で評価することです。
7. 仮歯・最終補綴と噛み合わせの設計
根管治療は内部の清掃消毒で終わりではありません。上からの封鎖と強度回復が同じくらい重要です。
歯質が薄くなった臼歯では、外周を抱える被せ物(クラウン)が適切なことが多く、前歯部では審美と機能のバランスを取りながら設計します。噛み合わせは点ではなく面で安定させ、過度な接触や側方干渉を避ける調整を行います。
仮歯の段階で咬合・清掃性・発音を確認し、最終補綴へ移行します。ここを省くと、後戻りやトラブルが増えます。
8. 痛みや腫れへの対応——受診目安と生活上の留意点
治療直後は、軽い違和感や咬合時の鈍痛が出ることがあります。多くは数日〜1週間で落ち着きますが、眠れないほどの痛み・発熱・顔の腫れ・飲み込みにくさがある場合は当日受診の目安です。
自宅では、患側で硬いものを噛むことを避け、強いうがいを繰り返さないこと。頬をやさしく冷やすと楽になることがあります。温めると増悪する場合があるため、温罨法は避けるのが無難です。市販の鎮痛薬は一時的に有効ですが、既往歴・内服薬・妊娠授乳により可否が変わります。自己判断での未承認薬やアロマ等の塗布は避けてください。
9. よくある誤解Q&A
Q. 1回で終わらせてほしいです。
感染や根の形が単純で症状が軽い場合、短回数で完了することもあります。ただし無理に急ぐと再発のリスクが上がります。状態に合わせた回数設定が結果的に最短距離です。
Q. 抗生剤を飲めば治りますか?
抗生剤は原因の除去の代わりにはなりません。腫れが強いなど全身的な配慮が必要な時のみ、診断の上で用います。基本は機械的・化学的清掃と密封です。
Q. 被せ物は白が良いのですが、強度は足りますか?
見た目と強度、清掃性の三点バランスで設計します。部位や噛み合わせにより適した材料が異なるため、診断の上で提案します。
10. 当院の取り組み——“その場しのぎ”で終わらせない根管治療
当院は、清潔な術野(ラバーダム等)・拡大視野・段階的画像診断を基本とし、洗浄・仮封・充填・最終補綴までを一連のプロセスとして設計します。
「痛みが引いた」で終わらず、上部からの微小漏洩を防ぐ最終修復と、噛み合わせ・歯周・清掃性の是正まで接続します。担当衛生士がメンテナンスで再発要因(プラーク、生活習慣、口呼吸や食いしばり)を並走管理し、必要に応じて口腔外科や医科と連携します。土曜日診療を含め、生活に合わせた通院計画をご相談ください。
まとめ
根管治療は、歯を残すための“内部環境の再設計”です。診断で原因の地図を描き、清潔な術野で丁寧に洗浄・密封し、上からの封鎖と噛み合わせの調整で再発の窓を閉じる。さらに、歯周管理と生活習慣の見直しを加えて“戻らない仕組み”にする——この流れが、長期的な安定への近道です。不安があれば、治療に入る前の現状評価と選択肢の整理だけでも構いません。たまプラーザで「抜かずに残す」を一緒に目指しましょう。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者
北海道大学歯学部を卒業後、恵愛歯科および笠原歯科に勤務。その後、笠原歯科人形町で院長として勤務し、1998年にむろき歯科医院を開業、さらに分院としてふぁみりあ歯科を開業
【略歴】
- ・北海道大学歯学部卒業
- ・恵愛歯科(東京都新宿区)勤務
- ・笠原歯科(東京日本橋蔵前本院)勤務
- ・笠原歯科人形町分院長
- ・むろき歯科医院開院
- ・医療法人社団 貴歯会設立 理事長就任
- ・分院 ふぁみりあ歯科開設
- ・北海道大学歯学部関東同窓会 広報理事
【所属団体】
- ・ITI インプラントAuthorization 取得
- ・ITI member
- ・ITIインプラントスペシャリスト認定
- ・日本口腔インプラント学会会員
- ・厚生労働省認可 社団法人日本歯科先端技術研究所会員
- ・同インプラント100 時間コース修了
- ・同インプラントフェロー認定
- ・インプラントスタディーグループ AOS 理事
- ・韓国KyungHee 大学
- ・Adavance surgery course 修了
- ・インビザライン Authorization取得
- ・アチーブメントテクノロジー
- ・スタンダードコース、ダイナミックコース、ダイナミックアドバンスコース、ピークパフォーマンスコース、ボースウィンマネージメント受講
- ・アシスタントプロスピーカー認定
たまプラーザ駅徒歩2分の歯医者・矯正歯科
TEL:045-912-2633
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