医院ブログ
【矯正歯科医が解説】「透明マウスピース矯正」を始める前に知ってほしい適応と本音

「仕事柄、矯正装置が見えるのは困るんです」 「食事のときは外せるって聞いたんですけど、本当ですか?」
診療室で患者さまとお話ししていると、透明のマウスピース型矯正装置(アライナー矯正)に興味を持たれている方が非常に増えていると実感します。
確かに、従来のワイヤー矯正に比べて目立ちにくく、ご自身で取り外しができる点は、日常生活における大きなメリットです。
しかし、歯科医師として正直にお伝えしなければならないことがあります。
それは、「装置の名前やブランドだけで治療法を選んでしまうのは、リスクがある」ということです。
マウスピース矯正は素晴らしい治療法ですが、決して「どんな歯並びも簡単に治せる魔法の道具」ではありません。患者さまご自身の協力が不可欠であり、医学的な向き・不向きも明確に存在します。
たまプラーザむろき歯科・矯正歯科、院長の室木です。
この記事では、あえてメリットだけでなく、限界やリスク、そして治療成功の鍵となる「診断」について、包み隠さず丁寧にお話しします。
装置選びの前に、まずは治療の「土台」となる知識を一緒に固めていきましょう。
目次
- 1. 透明マウスピース矯正、その「仕組み」と「現実」
- 2. 「私にもできますか?」適応症例と慎重になるべきケース
- 3. 成功の9割はここで決まる。「精密診断」の重要項目
- 4. 治療の流れと、期間・通院の考え方
- 5. 自由だからこそ難しい?「自己管理」というハードル
- 6. 誤解しないでほしい、ワイヤー矯正との比較論
- 7. 当院が「診断」と「予防」を重視する理由
1. 透明マウスピース矯正、その「仕組み」と「現実」
透明マウスピース矯正とは、患者さま一人ひとりの歯型に合わせて作製された「アライナー」と呼ばれる薄い透明な装置を、段階的に新しいものへと交換していくことで、歯を少しずつ目標の位置へ移動させる治療法です。
■ どのように歯が動くのか
1枚のマウスピースは、現在の歯並びよりも「わずかに(0.25mm程度)理想の位置に近い形」で作られています。このわずかな差が歯に圧力をかけ、生体の反応を利用して歯を動かしていきます。
単にカバーを被せているだけではありません。多くの場合、歯の表面に「アタッチメント」と呼ばれる樹脂製の小さな突起を接着し、それをハンドルのように使って力をコントロールします。また、必要に応じて「IPR(ディスキング)」といって歯の側面を髪の毛数本分ほど研磨し、歯を並べるスペースを作る処置を併用することもあります。
■ 最大の特徴は「患者さま主導」であること
この治療の最大のメリットは、目立ちにくさと、食事や歯磨きの際に「外せること」です。
しかし、これは裏を返せば「外している時間が長ければ、歯は絶対に動かない」という厳しい現実でもあります。あくまで患者さまご自身の管理能力が結果に直結する治療法であることを、まずはご理解ください。
2. 「私にもできますか?」適応症例と慎重になるべきケース
「友人がマウスピース矯正できれいになったから、私も」と希望される方は多いですが、医学的な観点から「向いている方」と「慎重に検討すべき方」がいます。
■ 適応しやすい症例
- 軽度〜中等度のデコボコ(叢生)
- 歯と歯の間に隙間がある(空隙歯列)
- 以前矯正をしていたが、少し後戻りしてしまった
- 歯列の幅を少し広げたい
■ 慎重な判断、または別の方法を推奨する症例
- 骨格的な問題が大きい場合: 上下の顎の位置ズレが大きいなど、歯の移動だけでは解決できないケース。
- 歯の根を大きく移動させる必要がある場合: 抜歯を伴う大きな移動などは、ワイヤー矯正の方が得意な場合があります。
- 重度の歯周病がある場合: 歯を支える骨が弱っている状態で無理な力をかけると、歯が抜けてしまうリスクがあります。
「マウスピース矯正専門」と謳う医院もありますが、当院では「あなたの歯並びにとってベストな方法は何か」を最優先に考えます。無理にマウスピースだけで治そうとせず、必要であればワイヤー矯正や外科的矯正の選択肢も含めて、フラットな視点で提案させていただきます。
3. 成功の9割はここで決まる。「精密診断」の重要項目
治療の良し悪しは、どのブランドの装置を使うかではなく、「治療開始前の診断精度」で決まると言っても過言ではありません。
当院では、見た目のシミュレーションを作る前に、以下の項目を徹底的にチェックします。
歯根(歯の根っこ)の状態
歯は、目に見えている部分だけでなく、骨の中に埋まっている「根」ごとの移動が必要です。CT撮影などで根の向きや長さを把握せず、表面上の並びだけを整えようとすると、根が骨から飛び出してしまう等のトラブルに繋がります。
歯周組織(歯ぐきと骨)の厚み
日本人は欧米人に比べて歯ぐきや骨が薄い傾向があります。無理に歯列を広げると歯肉退縮(歯ぐきが下がる)を起こすリスクがあるため、安全に動かせる範囲を見極めます。
顎関節と噛み合わせ
見た目がきれいになっても、噛み合わせが悪くなって顎が痛くなっては本末転倒です。顎の位置ズレがないか、機能的な問題がないかを確認します。
これらの医学的根拠に基づいた「設計図」があって初めて、マウスピースはその効果を発揮します。
4. 治療の流れと、期間・通院の考え方
① 相談・カウンセリング
まずは患者さまのゴール(どこまで治したいか)と、生活スタイル(装着可能か)をすり合わせます。
② 精密検査・治療計画の立案
レントゲン、口腔内スキャン、顔貌写真などのデータを元に、三次元的な治療計画を立案します。「どの歯を、いつ、どれくらい動かすか」を綿密に設計します。
③ 治療開始・アライナーのお渡し
完成したアライナーをお渡しし、着脱の練習や取り扱い方法をご説明します。通常、1〜2週間ごとにご自宅で新しいアライナーに交換していただきます。
④ 定期チェック(1〜2ヶ月に1回)
計画通りに歯が動いているか、虫歯や歯周病になっていないかを確認します。もしズレが生じている場合は、早めに軌道修正を行います。
⑤ 保定期間(リテーナー)
歯並びが整った直後は、骨が固まっていないため非常に後戻りしやすい状態です。「保定装置(リテーナー)」を装着し、きれいになった歯並びを安定させます。これは矯正治療の一部であり、非常に重要な期間です。
5. 自由だからこそ難しい?「自己管理」というハードル
透明マウスピース矯正の成功の鍵は、間違いなく「装着時間の厳守」です。
推奨される装着時間は、1日20〜22時間以上。つまり、食事と歯磨きの時間以外は、基本的にお風呂でも就寝中でもずっと着けている必要があります。
- 「飲み会で長時間外してしまった」
- 「旅行中に着けるのを忘れて寝てしまった」
- 「間食のたびに歯磨きをして着け直すのが面倒になった」
こうした「外しっぱなし」の時間が積み重なると、歯は計画通りに動きません。結果として治療期間が延びたり、アライナーの作り直し(追加費用や時間のロス)が必要になったりします。
ご自身のライフスタイルの中で、本当にこのルールを守り続けられるか。スタート前に一度、具体的にイメージしてみることが大切です。
6. 誤解しないでほしい、ワイヤー矯正との比較論
よく「マウスピースはワイヤーより優れているのですか?」と聞かれますが、これは優劣の問題ではありません。それぞれに「得意・不得意」があるツールです。
- マウスピース型: 審美性と清掃性(歯磨きのしやすさ)に優れ、口内炎などのトラブルが少ない。
- ワイヤー型: 歯を大きく動かす、複雑な噛み合わせを治すなどの三次元的なコントロールにおいて、依然として非常に強力で確実性が高い。
当院では、「目立たないこと」を最優先したい場合はマウスピースを、難症例で「確実な仕上がり」を優先したい場合はワイヤーを、あるいはその両方を組み合わせるなど、柔軟に提案します。
「流行っているから」ではなく、「あなたにとって最良の結果が出るから」という理由で選んでいただきたいと考えています。
7. 当院が「診断」と「予防」を重視する理由
矯正治療は、単に歯を並べるだけの美容的な処置ではありません。一生使い続ける大切な臓器である「歯」と「噛み合わせ」を守るための医療行為です。
だからこそ、たまプラーザむろき歯科・矯正歯科では、矯正治療を単独で考えず、「むし歯・歯周病の管理(予防)」とセットで行うことを徹底しています。
矯正中に虫歯ができてしまっては、治療計画が台無しになってしまうからです。
当院では、歯科衛生士によるプロフェッショナルケアを並行して行い、矯正中のお口の環境を清潔に保つサポートを全力で行います。
また、親知らずの抜歯が必要な場合や、被せ物のやり直しが必要な場合も、院内で連携してスムーズに対応できる体制を整えています。
透明マウスピース矯正は、正しく行えば快適で素晴らしい治療法です。
- 「私の歯並びはマウスピースで治るのかな?」
- 「自分の生活リズムで続けられるか心配」
そのような疑問をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
たまプラーザで矯正歯科をお探しなら、たまプラーザむろき歯科・矯正歯科へお任せください。あなたの生活に寄り添い、無理のない最適なプランをご提案いたします。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者
北海道大学歯学部を卒業後、恵愛歯科および笠原歯科に勤務。その後、笠原歯科人形町で院長として勤務し、1998年にむろき歯科医院を開業、さらに分院としてふぁみりあ歯科を開業
【略歴】
- ・北海道大学歯学部卒業
- ・恵愛歯科(東京都新宿区)勤務
- ・笠原歯科(東京日本橋蔵前本院)勤務
- ・笠原歯科人形町分院長
- ・むろき歯科医院開院
- ・医療法人社団 貴歯会設立 理事長就任
- ・分院 ふぁみりあ歯科開設
- ・北海道大学歯学部関東同窓会 広報理事
【所属団体】
- ・ITI インプラントAuthorization 取得
- ・ITI member
- ・ITIインプラントスペシャリスト認定
- ・日本口腔インプラント学会会員
- ・厚生労働省認可 社団法人日本歯科先端技術研究所会員
- ・同インプラント100 時間コース修了
- ・同インプラントフェロー認定
- ・インプラントスタディーグループ AOS 理事
- ・韓国KyungHee 大学
- ・Adavance surgery course 修了
- ・インビザライン Authorization取得
- ・アチーブメントテクノロジー
- ・スタンダードコース、ダイナミックコース、ダイナミックアドバンスコース、ピークパフォーマンスコース、ボースウィンマネージメント受講
- ・アシスタントプロスピーカー認定
たまプラーザ駅徒歩2分の歯医者・矯正歯科
TEL:045-912-2633
RECENT POSTS最近の投稿
TAGタグ
ARCHIVE月別アーカイブ
2026年 (3)
2025年 (63)
2024年 (16)
2023年 (9)
2022年 (16)
2021年 (19)
2020年 (17)
2019年 (30)
2018年 (19)



















