医院ブログ

親知らずの抜歯で後悔しないために|院長が教える「判断基準」と「安全な進め方」

「親知らずがなんとなく痛むけれど、抜くのが怖くてそのままにしている」

「抜いた後は顔が腫れると聞いて、仕事への影響が心配」

 

診療室で患者さまとお話ししていると、親知らずに対してこのような不安を抱えている方が非常に多いと感じます。

インターネット上には「激痛だった」「すぐに終わった」など様々な体験談が溢れていますが、大切なのは情報の多さではなく、「あなたの親知らずが今どういう状態で、どう対処するのが医学的に正解か」を知ることです。

 

たまプラーザむろき歯科・矯正歯科、院長の室木です。

親知らずは、必ずしも全て抜かなければならないわけではありません。しかし、抜くべきタイミングを逃すと、手前の健康な歯まで失う原因になることもあります。

 

この記事では、皆様が安心して判断できるよう、歯科医師の視点で「抜歯のメリット・デメリット」「安全に進めるための段取り」「術後のトラブル回避術」について、包み隠さず丁寧にお話しします。

 

目次

 

1. 抜くか、残すか。歯科医が重視する2つの判断基準

「親知らずが生えてきたら、すぐに抜かないといけませんか?」というご質問をよくいただきますが、私の答えは「ケースバイケース」です。無理に抜く必要がない場合もあれば、自覚症状がなくても早急に抜くべき場合もあります。

 

私たちが判断の軸にしているのは、主に以下の2点です。

 

① 現在の清掃性(汚れが溜まりやすくないか)

歯ぐきから半分だけ顔を出しているような「半埋伏」の状態は要注意です。歯と歯ぐきの隙間(フード)に食べカスやプラークが溜まりやすく、智歯周囲炎という炎症を繰り返す原因になります。「疲れると奥歯が浮くような感じがする」場合、すでに慢性的な炎症が起きているサインかもしれません。

 

② 将来のリスク(隣の歯を守れるか)

これが最も重要です。親知らずが斜めや横向きに生えていて、手前の「第二大臼歯」を押している場合、その接触部分から深い虫歯になったり、歯周病で骨が溶かされたりするリスクが高まります。

第二大臼歯は一生使うべき主要な奥歯です。この歯を守るために、親知らずが「悪さ」をする前に抜く、という予防的な判断をすることが多くあります。

 

逆に言えば、まっすぐ生えていて上下がしっかり噛み合い、ブラッシングも完璧に行き届いているなら、抜く必要はありません。

 

2. 安全な治療は「問診」から始まっている

抜歯は外科処置ですので、お口の中を見るだけでは不十分です。初診時には、患者さまの全身状態を丁寧にうかがいます。

 

特に以下の項目は、安全に関わる重要な情報です。

  • 服用中のお薬: 血液をサラサラにするお薬、骨粗鬆症の治療薬、糖尿病薬などは、止血や術後の骨の治りに影響します。
  • 持病の有無: 心疾患、肝臓・腎臓のご病気、高血圧など。
  • アレルギー: 薬やラテックスへのアレルギー。

これらを事前に把握することで、万が一の事態を未然に防ぐことができます。「歯科に関係ないかも」と思わず、些細なことでも教えていただけると、私たちも安心して処置に臨めます。

 

また、炎症が強く出ている(ひどく痛む・腫れている)時に無理に抜歯をすると、麻酔が効きにくく、術後の腫れも強くなる傾向があります。その場合は、まずお薬で炎症を抑えてから、後日改めて抜歯を行うのがベストな選択です。

 

3. 難易度を左右する「根の形」と、CT診断の重要性

「親知らずの抜歯は難しい」と言われることがありますが、その難易度は「骨の中でどうなっているか」で決まります。

  • 神経との距離: 下顎の親知らずのすぐ近くには、唇の感覚を司る太い神経(下歯槽神経)が通っています。
  • 上顎洞との距離: 上顎の場合、鼻の空洞(副鼻腔)と根っこが近接していることがあります。
  • 根の形: 根っこが複雑に曲がっていたり、骨を抱え込むように開いていたりする場合。

これらを正確に見極めるために、当院では通常のレントゲンだけでなく、必要に応じて「歯科用CT」による三次元診断を行います。

平面のレントゲンでは重なって見えない部分も、CTであれば立体的に把握できます。「神経までこれくらいの距離があるから、こっちの方向に力をかけよう」といった精密なシミュレーションが可能になり、それが安全でスピーディーな処置につながります。

 

4. 痛みと不安を最小限に。当日の麻酔と処置の流れ

いざ抜歯となると緊張されるかと思いますが、当日は以下のステップで痛みのコントロールを徹底します。

  • 表面麻酔: 注射の針の痛みを和らげるため、歯ぐきにゼリー状の麻酔を塗ります。
  • 浸潤麻酔・伝達麻酔: 奏効性の高い麻酔法を用い、感覚をしっかりと遮断します。「効いたかな?」と確認してから処置に入りますのでご安心ください。
  • 抜歯処置: 歯ぐきを少し切開し、必要であれば歯を分割して取り出します。歯を割る際に「パキッ」と音がすることがありますが、痛みはありません。
  • 縫合・止血: 傷口を洗い、感染源がないことを確認して縫合します。

術中は、麻酔のおかげで痛みを感じることはほとんどありません。「押される感じ」や「響く感じ」は残りますが、もし痛みを感じたらすぐに合図をしてください。麻酔を追加して対応します。

 

5. 腫れや痛みはいつまで?術後の経過と「ふつうのこと」

抜歯後、「どれくらい腫れますか?」とよく聞かれますが、これは骨を削った量や個人の体質によります。

  • 痛みのピーク: 麻酔が切れた当日の夜〜翌日
  • 腫れのピーク: 翌日〜翌々日(2〜3日後)

これらは体が治ろうとする正常な反応(炎症反応)ですので、過度に心配する必要はありません。腫れはその後、1週間ほどかけてゆっくりと引いていきます。

 

【楽に過ごすためのコツ】

  • 冷却: 濡れタオルなどで頬の外側を「気持ちいい程度」に冷やしてください。氷で冷やしすぎると血流が悪くなり、かえって治りが遅くなります。
  • 就寝時の姿勢: 枕を少し高くして寝ると、頭部への血流の鬱滞が防げ、痛みが和らぎやすくなります。
  • 食事: 麻酔が切れてから、うどんやおかゆなど柔らかいものを反対側の歯で噛んでください。

 

6. これだけは知っておきたい。ドライソケットと合併症のサイン

術後のトラブルで最も知っておいていただきたいのが「ドライソケット」です。

通常、抜歯後の穴には血餅(けっぺい)というかさぶたができて骨を覆い、治癒していきます。しかし、強いうがいや喫煙、ストローの使用などでこの血餅が剥がれてしまうと、骨が露出して激しい痛みを伴います。

 

「3〜4日経っても痛みが引かない、むしろ強くなっている」という場合はドライソケットの可能性があります。ご自宅で我慢せず、早めにご連絡ください。お薬を詰め直す等の処置で痛みは楽になります。

 

その他、以下のサインがある場合もご連絡ください。

  • 翌日になっても出血が止まらない
  • 発熱(38度以上)がある
  • 口が開かないほど腫れている
  • 唇にしびれが残っている

 

7. 旅行・結婚式・妊娠…抜歯スケジュールの立て方

親知らずの抜歯は、ご自身の予定に合わせて計画的に行うのが鉄則です。

  • 大切なイベント前: 試験、結婚式、旅行などの直前(1週間以内)は避けましょう。腫れや痛みが残っていると、せっかくのイベントを楽しめません。
  • 飛行機の搭乗: 気圧の変化で痛みが出ることがあるため、直後のフライトは避けるのが無難です。
  • 妊娠・出産: 妊娠中はレントゲンや薬の使用に制限が出ます。また、産後は育児で通院の時間が取りにくくなります。これから妊娠を希望される方(妊活中の方)や、安定期に入られた方は、トラブルが起きる前に受診することをお勧めします。

 

8. 院長からのメッセージ:お口全体の未来を守る選択を

親知らずの抜歯は、誰もが不安に感じるものです。

しかし、リスクのある親知らずを適切な時期に処置することは、将来起こりうる「手前の歯の虫歯」や「歯並びの悪化」、「突然の激痛」を未然に防ぐための、非常に価値のある投資でもあります。

 

たまプラーザむろき歯科・矯正歯科では、「ただ抜いて終わり」ではありません。

抜歯後の穴がしっかり塞がるまでのケアはもちろん、親知らずの影響を受けていた手前の歯のクリーニングや、噛み合わせのチェックまで、責任を持ってフォローいたします。

 

「私の親知らずはどうなんだろう?」

そう思われた方は、まずは検査だけでも構いません。たまプラーザ駅から徒歩3分、土曜日の診療も行っております。

現状を正しく把握し、あなたにとって一番負担の少ない方法とタイミングを一緒に考えていきましょう。ご相談をお待ちしております。

 

少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

監修者

室木 貴行 | Muroki Takayuki

北海道大学歯学部を卒業後、恵愛歯科および笠原歯科に勤務。その後、笠原歯科人形町で院長として勤務し、1998年にむろき歯科医院を開業、さらに分院としてふぁみりあ歯科を開業

 

【略歴】

 

【所属団体】

 

たまプラーザ駅徒歩2分の歯医者・矯正歯科

たまプラーザむろき歯科・矯正歯科

住所:神奈川県横浜市青葉区新石川3-4-18

TEL:045-912-2633

たまプラーザむろき歯科・矯正歯科

TAGタグ